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2011/03/26

3Dディスプレイの可視化利用が思うように進まない。

Filed under: Uncategorized — by yt070507 @ 19:29

CAVEはコストが高いと言われ続けているが、一昔前に比べたら10分の1くらいだ。それに、仮にCAVEを建てて維持できたところで問題は山積している。主に人の問題だ。解決策としては(当ったり前だが)【人と人をしっかり繋げつつ、数をこなすこと】しか見あたらない。その中でCAVE可視化プロフェッショナルと呼べる専門職をつくりあげていかなければならない。
以上が結論だが、そこに至るまでの考えを以下に述べる。

人と人が協調するには放っておくだけでは駄目

とある研究機関の事例。CAVEを建ててツールも揃えて人雇った。スパコンとCAVEをつなぐ。素晴らしいアイデアだ。確かに建てた当初はそれなりに需要もあった。だが、特需は長続きしなかった。いや需要はあるはずなのにうまくリンクしない。箱と人があれば良いというものではなく、人と人をうまく結びつけるためには全体のグランドデザインが重要なのだ。

可視化サービスにお金を払うというマインドの欠如

今やCAVE生誕20周年を迎えようとしている。CAVEを売っているような業者が、お金さえ出せば、可視化の相談に乗ってくれる世の中になった。少々高いかもしれないけれど、CAVE建てたり維持したり人雇ったりするよりは安いと思われる(なんて事を僕のような立場の人が言っては駄目なのか…)。今、質的にどうかわからないけれど、育てるつもりでやれば、それなりに成長が見込まれる業界なのではないだろうか。

可視化を自分の手でやりたいシンドローム

可視化は主に問題そのものに取り組んでいる人がやる仕事だ。エクセルを使うレベルから、matlab のようなプログラミング環境を使いこなしたり、あるいは普通のプログラムを組むレベルまで色々あるだろう。今ではCAVEを使う可視化ツールも様々なものが売られている。それらの可視化ツールをうまく使いこなすことができれば、それで問題は解決する。何もCAVE研究者を雇う必要はない。その「それなりの可視化ツール」では満足できる可視化結果が得られない時に初めて、VR研究者の出番となる。でも、実際問題、可視化ツールをうまく使いこなしている研究機関というのを日本ではCAVE研究関係以外で見たことは「僕は」ない。
お金がない、という理由でCAVEを持ってるVR研究者にデータを持ち込もう、というアイデアは今までにも散々あった。だが、VR研究者が単なる単価の安い下請け業者状態になって、必ずしもハッピーな状態にはならなかった。今でもその状況は変わらない。相変わらず、データを出す、出さないの段階でもめる。きっとデータを渡す事は、身を切られるような感覚なのだろう。それはそれでこちらも良くわかる。でもそれでは話は先に進まない。建前では共同研究と言いつつ、その実、立場を対等に保つのは難しい。
プログラミング技術に自信がある研究室であればあるほど、ツールやライブラリさえあれば使いこなせると思うようだ。でも、今までその考え方で動こうとした例があったけれど、長続きはしなかった。数年後、捲土重来を謀ったけれど、やはりうまくいかなかった。やり方を教えろと言ってきて、所属学生をよこし、こちらも一生懸命教えてみたが、結局使いこなせなかった。
様々な専門家相手にCAVEのデモをやっても、建てるのにいくらかかるのか、とかソフトいくら、とかいう質問は良くあっても、見たいデータがあるのですが、とデータを持ち込む例は少ない。可視化の効果が伝わらないのか、お金を取れば問題解決と思っているのか…
そもそも次元数が3以上のデータの操作が元来持つ難しさというのがあり、日頃から可視化鍛錬を重ねていないと、いざというときに役に立たない。3次元空間上での表現が決まっていたとしても、空間内(時間軸を含めると4次元)でのオブジェクト操作の難しさが立ちはだかる。
実際にやってみればわかるのだが、2次元ディスプレイでやっていた可視化では思わなかった難しさが、3次元ディスプレイにはある。それをクリアするには、それなりの才能が必要だ。それに、CAVE可視化ができるようになったからと言って、それでコンスタントに業績をあげられるようになるには、さらに別の才能を要求される。せっかくCAVEを使えるようになっても、その業界でサステイナブルでなければならない。別の分野の研究者が片手間でやるには(今のところ)ヘビーすぎると思う。

CAVE研究者側の問題

餅は餅屋なのだが、餅屋は良いもち米を作れない。少ない餅米で作った数少ない餅を見ても、その餅屋の腕を見る事は困難だ。日本にもCAVE研究者は多数居るが、中には手が遅い人が居る。日頃CAVEを使っているプロではあるのだけれど、可視化については数えるほどの事例しか扱っていない人は確実に居る。可視化の過程では様々な手法を次から次へと適用していく必要があり、そこにスピードが求められる。CAVEで可視化手法を専門に研究している研究者というのも確かにいらっしゃる。しかし、2Dの世界での可視化スピード・多様性と比べられると、なかなかつらいのが現実ではないだろうか。リアルな問題を数多くこなす必要があると思われる。
しかし、もっと単純な問題もある。可視化可視化と言いながら、普段の2D可視化にエクセルグラフで満足し、グラフツールの買い惜しみをするようなマインドで可視化研究を細々と続けている所がある。ましてや世の先端を走るCAVE可視化ツールなんて、手が届かない。世の中に普及している可視化ツールを持って使いこなしつつ、さらにその上を目指す、のが真の姿ではなかろうか。

より良い可視化ツールを作れば良いのか?

matlab/simlink のようなデファクトスタンダードなツールは結局そこそこ良いビジネスになっている。そこにお金の流れがなければ、ここまで育たなかったのかも知れない。CAVE版の matlab/simlink 的な万能ツールが作られるとしてもそれは、学術界からは出ないだろう。ありとあらゆるニーズに耐えうるツールを作る、というミッションで成功した研究者は近年には居ない。「実用に耐えうるツールを作る」事に対する貢献ついて学術界が直接評価する事はなかなかない。それでは業者が作るのか?なかなかそうもいかないだろう。そこに市場を感じない限り、ビジネスマンはそこに投資をしないだろう。

数が勝負なのでは

いずれにしても、2Dディスプレイによる可視化事例に比べて3Dディスプレイの事例は圧倒的に少ない。数をこなさなければ、本当に使えるツールにはならない。いくらアラブの石油王が投資をしてくれたところで、問題を数多くこなさなければ、使えるツール/システムは作れないと断言できる。
「言い訳ばっかりするな!」「出来ない理由を100個考えるより今あるリソースをうまく使う方法を1つだけ考えろ」とは良く言われる僕だが…「解決策は【人と人をしっかり繋げつつ、数をこなすこと】です」と言ったら、また叱られるだろうか。具体性ないですからねぇ。

 

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